美しき日本の残像 Lost Japan: Last Glimpse of Beautiful Japan

日本文化に造詣の深いアレックス・カーの日本美をめぐるエッセイ集。同著者の「犬と鬼」へとつながる名著です。

アレックス・カーは、徳島県・祖谷の「篪庵(ちいおり)」、長崎県・小値賀の古民家ステイや京都の京町家ステイなど、1970年代から古民家再生をおこない、現在は日本全国の古民家再生のプロデュースなども手掛けられています。

【本書からの引用】
「以前住んでいた人たちは、生活道具、身の回りの品などをそのまま捨てて行ったようで、そのような道具類を通して祖谷の人々の生活をよく見ることができました。なかでも興味深かったのは、1950年頃書かれた少女の日記でした。その中には祖谷の生活の貧しさ、家の中の暗さ、そして大都会に対する絶望的なまでの憧れが、涙と共に素直に書かれていました。その日記を思い出すたびに、日本人はなぜ自然破壊に手をそめてしまったのか、なぜコンクリートと蛍光灯という生活環境の中に住みたがったのかが少し理解できるような気がします。」(p.33)

「色々工夫しているうちに、照明の戦略上大事なことの1つが「下からの照明」であることを学びました。今の私たちの生活はほとんど上からの照明が多いのですが、昔の家はたいてい囲炉裏の火の光、蝋燭、行燈など下からの照明ばかりでした。(中略)きっと人類が洞窟時代から受け継いだ精神の故でしょう。」(p.38~39)

「「夢の日本」はある意味で外国人が見た日本です。コンクリートと電線だらけの醜悪が今の日本の現実です。そうなってくると、消え去った日本の美に対して日本人は外国人になってしまいました。」(p.289)


【書誌情報】
書 名:美しき日本の残像 Lost Japan: Last Glimpse of Beautiful Japan
著者名:アレックス・カー Alex Kerr
発行所:朝日新聞出版 Asahi Shimbun Publications Inc.
出版年:2000

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