およそ100年前に出版された今和次郎の名著「日本の民家」に収録された無名の民家の現在を追った執念を感じる1冊。
合計46か所のうち、20か所を敷地特定、11か所を街区特定、15か所は特定できずとのこと。
【本書からの引用】
「「日本の民家」は民家研究の嚆矢として紹介されながらも、従来の日本の建築史学の世界にあっては、その価値を不当におとしめられてきた。第二次世界大戦後以降に活発化した日本の民家研究は、急激に破壊されていく民家の全国的調査と、その年代史的変化を、間取りの変遷の実証分析などによって確定することにより、客観的な学問として成立させていった。これらの主要な流れのなかで、「日本の民家」は、非科学的(データが抽象化、客観化されていない)として片づけられてしまったのである。」(p.47)
「「日本の民家」を著わした大正期は、米騒動や小作争議に代表されるように、中央と地域のバランスが、資本経済の勃興によって崩れてしまった時代だったのである。まるで現在にもつながっている社会矛盾のひな形の誕生といってもよかった。」(p.257)
【書誌情報】
書 名:今和次郎「日本の民家」再訪
著者名:瀝青会 Rekiseikai
発行所:株式会社平凡社 Heibonsha
出版年:2012
【関連書籍】
日本の民家