図説精読 日本美の再発見-タウトの見た日本

ブルーノ・タウトが、日本美や桂離宮の再発見者と評されるのはなぜか?タウトの名著「日本美の再発見」を、タウトのスケッチや写真などの豊富な図版と、篠田訳の精読・注解を通して読み解いた1冊。

【本書からの引用】
「タウトの名を護符や盾として便利に引用する日本人とは異なる次元で、タウトは桂離宮や伊勢神宮、そして昭和初期の日本に、自らが理想とする多様性を許容した統一が存在する世界を感動をもって見つめていた。タウトは日本で、自身の理想を発見したのである。それは、かつてドイツ革命後の反動とナチスの台頭によって断ち切られた理想の世界でもあった。日本に迫り来る同じ運命を予感するかのように、タウトは時に警告を発したが、それは戦時の闇へと飲み込まれていった。」(p.226)

「タウトは、桂離宮自体を永遠の美、永遠なるものと表現したのではなく、自らの建築理念と創造の精神を、桂離宮を一素材として説明したと考えられるのである。『日本美』を手にした多くの日本人が、翻訳の「永遠なるもの」という悲哀を帯びた響きに、桂離宮を通したロマン主義的なイメージを重ねた。それを、単に翻訳の問題に帰することはたやすい。しかし『日本美』誕生の背景には、「非常時」「戦時下」「総力戦」という人々を押し流す奔流のような時代があり、その奔流に多くの人々が巻きこまれ、流されていることにも気づかなかったことにこそ注視すべきであろう。」(p.230)


【書誌情報】
書 名:図説精読 日本美の再発見-タウトの見た日本
著 者:ブルーノ・タウト Bruno Taut
訳 者:篠田英雄 Shinoda Hideo
編 者:沢良子 Sawa Ryoko
発行所:株式会社岩波書店 Iwanami Shoten, Publishers
出版年:2019

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