日本の民家

「民家」という言葉を世に広める契機となった今和次郎による名著。佐藤功一や柳田国男らによって設立され、日本における民家研究の先駆けとなった「白茅会(はくぼうかい)」での調査がベースとなっている。

初版は、1922年に「日本の民家 田園生活者の住家」として鈴木書店より発行。写真の右側は、1954年に相模書房より発行された増補改訂版。

【本書からの引用】
「都会の人たちは物好きに汽車の窓から変った恰好の田舎の家をながめて、その建築の工夫に驚くことがあるかも知れないが、でもそれは、その土地の人たちにとっては極めて自然な建築的工夫なのである。また反対に、極めて気のきかない間取のやり方だと考える家を沢山見るかも知れないが、それもやはりその土地の田舎の人たちの日々の生活を本当によく知らなければ、むざと批評することが出来ないことなのである。」(p.30)

「我国の原住民の住居趾が着々と研究されているが、それは中心柱のある円形のもので、床は土間であるが、その中に炉が作られているものである。おそらく我国の農民の祖先は実にかかる家に住んでいたと思えるのであるが、だんだんそれらのうちに、板床を張った作りの家が交じって、それらによって我国の村の構成が出来て来た。(中略)平安時代の都の邸宅の作り方が発達してから、やがて農村へもその風が伝播して、自然に板の間の部分が都の寝殿造りかの如く使われるようになって来た。(中略)次に、鎌倉時代になると、家居の構え方に革命が起きる。それは接客法の改革からである。(中略)室に上、中、下と格付けしたのである。その際に平安時代からの納戸を加えて、四室の田字型の間取りとし、それを定法とすることになった。(中略)平安時代の風習の濃い東北地方では、在来の広間式の間取に、新たな時代に即応するように、上下の二た座敷を折衷的に更に加えて、それを一般の方式とするに至った」(p.80~82)


【書誌情報】
書 名:日本の民家
著者名:今和次郎 Kon Wajiro
発行所:株式会社岩波書店 Iwanami Shoten, Publishers
出版年:1989

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