古民家びとレポート「総務省 平成25年住宅・土地統計調査」からみる古民家の現状について

古民家びとレポート
「総務省 平成25年住宅・土地統計調査」からみる古民家の現状について

今年7月、総務省が5年に一度実施する「平成25年住宅・土地統計調査」の速報集計が公表されました。古民家びとでは、この統計調査の結果をもとに、都道府県別の古民家数や東日本大震災後の古民家の改修率など、古民家の現状について調べましたのでご紹介します!

全国に残る古民家は、約156万戸

古民家びとを運営していると、しばしば「古民家ってどれくらい残っているのですか?」と質問されます。「古民家」の厳密な定義はありませんが、築年数の観点では、登録有形文化財の基準に準じて、築50年以上の民家とされ、技術的な観点では、高度経済成長期に登場し、現在の主流となった工業化住宅は含まず、いわゆる伝統構法で建てられた民家とされることが一般的です。
これらをふまえて、「平成25年住宅・土地統計調査」の速報集計から古民家びとにて集計した結果、調査時点(平成25年10月1日)における全国に残る古民家は、約156万戸であり、木造住宅全体の約5%であることが分かりました。

 

都道府県別の古民家数ランキング~1位は大阪府、2位は兵庫県、3位は愛知県~

図2は、同調査結果の中から都道府県別の古民家数を古民家びとにて集計しグラフ化したものです。1位:大阪府89,000戸(約6%)、2位:兵庫県69,700戸(約4%)、3位:愛知県64,800戸(約4%)、4位:京都府60,900戸(約4%)、5位:広島県59,100戸(約4%)となっています。
古民家びと運営事務局がある宮城県は、22,000戸(約1%)で35位でした。
※()内は日本全国の古民家数約156万戸に占める割合

 

古民家数減少率ランキング(全国及び都道府県別)

次に、前回調査「平成20年住宅・土地統計調査」の確報集計と比較した結果、この5年間で、全国で約23万戸(12.8%減)もの古民家が減少したことが分かりました。この減少数と減少率を都道府県別に集計した結果が、図3です。減少率1位:沖縄県27.9%、2位:宮城県25.4%、3位:宮崎県19.4%となっており、全国平均12.8%に対して非常に高い数値となっています。
もともとの残存数が少ない沖縄県の場合、10数年後には古民家がなくなっている可能性があります。そんな中、古民家の利活用を推進している地元の団体もあるようですので、今後も注目したいと思います。
また、宮城県の場合、この5年の間に東日本大震災がありました。主に津波によって古民家が滅失したことに加えて、公費による無料解体によって、地震や津波による損壊とは無関係の古民家が、数多く解体・廃棄されたとの指摘もあります。

 

東日本大震災後の古民家の改修率(岩手県、宮城県、福島県)

東日本大震災をきっかけに解体・廃棄された古民家がある一方で、改修された古民家もあったようです。図4は、図2で集計した被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の古民家のうち、東日本大震災後に改修された古民家の割合を示しています。岩手県では1,500戸(6.0%)、宮城県では4,100戸(18.6%)、福島県では5,300戸(15.0%)が改修されています。
古民家びとでご紹介している福島県の古民家オーナー豊田 善幸さんは、津波被害で解体危機だった古民家を残したい一心で、ご自身で買い取り、協力者と共に改修を手掛けられました。新たに「清航館」として生まれ変わった古民家は、壁塗りイベントや写真展など、地域コミュニティの場として利活用されています。
古民家オーナー豊田 善幸さんの詳細はこちら

 

コメント


いかがだったでしょうか?ライフスタイルの変化、後継者不足、改修費の負担といった理由で、毎年、多くの古民家が解体・廃棄されています。その一方で、古民家を独自の切り口で利活用し、地方での新しい働き方や暮らし方を実践したり、まちづくりのけん引役となったりする古民家オーナーが現れてきました。古民家は、ただ古いだけではありません。世界に誇る日本の文化であり、地域のお宝だと思います。そして、古民家には、魅力的な人々を引き寄せる不思議な力があり、そこでは先進的な取り組みが行われています。

次回の調査では、解体・廃棄される古民家が減ることを願って、古民家びとでも引き続き先進的な古民家の利活用事例について調査し、魅力的な人々を引き寄せるヒントを探っていきたいと考えています。
写真上:解体される古民家(宮城県)写真下:子民家etokoro(滋賀県東近江市)

 

出典について

図1、図2は平成25年住宅・土地統計調査 速報集計の表番号3より古民家びとにて集計・作成
図3は平成25年住宅・土地統計調査 速報集計の表番号3と平成20年住宅・土地統計調査 確報集計の都道府県別編の表番号4より古民家びとにて集計・作成
図4は平成25年住宅・土地統計調査 速報集計の表番号3と表番号45より古民家びとにて集計・作成

・総務省 統計局「平成25年住宅・土地統計調査 速報集計」
表番号3「第3表-住宅の建て方(4区分),構造(5区分),階数(9区分),建築の時期(14区分)別住宅数」及び表番号45「第45表 住宅の建て方(4区分),建築の時期(14区分)別東日本大震災による被災箇所の改修工事をした持ち家数」
建築の時期 (14区分):昭和25年以前、構造(5区分):木造及び防火木造
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001052724&cycode=0

・総務省 統計局「平成20年住宅・土地統計調査 確報集計」
表番号4「第4表-住宅の種類(2区分),構造(5区分),建築の時期(13区分)別住宅数」
建築の時期 (14区分):昭和25年以前、構造(5区分):木造及び防火木造
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001028768

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